なぜ暗号資産マルチの加害者は詐欺罪にならないのか。マーケットピークの事件から考察してみる

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問題の背景

2023年の5月、マーケットピークと呼ばれる海外の暗号通貨プロジェクトのコインをマルチ(MLM)を利用して斡旋・販売していたメンバー、合計9名が大阪府警によって逮捕されました。( 事件の記事はこちら )

最近話題の突撃系のYoutuberが突撃していたこともあり、当時ニュースでも大きく報道されました。その裁判の結果が今年(2023年)の10月3日に報道され、3名の容疑者に有罪判決が下されたようです。しかし、その3名はいずれも執行猶予付きの判決であり、ネット上では「人をだまして多額の資金を集めたのに判決が甘いのではないか」という意見が多く見られました。

※本記事執筆にあたり可能な限り調査しましたが、筆者は法律の専門家ではないですので、もし何か突っ込みどころがありましたらCLCのフォーラム等で書き込みして指摘いただけましたら大変助かります。

今回の容疑者はどのような罪で逮捕されたのか

そもそも、今回の事件で容疑者は何をしたのでしょうか。事件当時の記事 によると、「複数回にわたり消費者との連鎖販売取引の契約の際に、法令で定められた契約書等を交付せず、また、契約の解除を妨げるために本当ではないことを言った「特定商取引法」違反で逮捕された」とあります。

つまり、SNSやニュースでは「投資」や「詐欺」という言葉が躍っていましたが、実際に逮捕された容疑は「特定商取引法違反」となっています。

もちろん、警察が捜査を開始した大きな理由は、投資詐欺としての被害の訴えをする「被害者」が多くいたことだとは思われますが、実際には裁判の結果を見ても「詐欺罪」ではあく、あくまで「特定商取引法違反」での判決となっています。詐欺罪の場合、刑事罰の罰則は10年以下の懲役であり実刑になる事例もありますが、特定商取引法違反の場合、罰則は3年以下の懲役であり、ほとんどのケースで執行猶予付き、もしくは罰金刑のみとなることが多いようです。

量刑が比較的軽くなっているのも、罪状が詐欺や金商法違反ではなく、特商法違反であることが理由かと思われます。では、なぜ「投資詐欺」と世間を騒がせたこの事件の容疑者は詐欺でも金商法違反でもなく、特商法違反のみの判決となったのでしょうか。

本記事では、このような「投資詐欺」の多くが詐欺としては立件されず、特定商取引法違反にとどまり、被害額や報道される際の印象と比較して比較的軽い量刑になってしまうのか、という点について考察していきたいと思います。

マーケットピークとはどのような事業だったのか

マーケットピークで提供されていたサービスは主に「教育」と「独自コイン(PEAKコイン)」の提供のようです。

セミナー等での勧誘の際には、マーケットピークの会員になると「これから価格が上がる暗号通貨を教えてもらえる ( =教育 ) 」だけでなく、「独自コインPEAKを毎月受け取ることが出来る」という触れ込みで広がったようです。

実際に内部でどういったサービスが提供されていたのか、ということまでは筆者は知りませんが、独自コインPEAKの価格が大きく下落したことで多くの被害者( = 投資に失敗した人たち ) が誕生してしまい、問題が顕在化したということのようです。

今回の容疑者は具体的に何をしたのか

先にも簡単に書きましたが、今回マーケットピークのコイン(PEAK)を斡旋したマルチ会員のメンバーは、下記のような説明を行いながらコインの販売を行っていたようです。

・損しても元本保証する
・連鎖販売(マルチ商法)の場合に必要になる書面の交付を行っていなかった
・解約を防ぐために、「解約できない」など虚偽の説明をした
・PEAKコインの価格が上がると謳いながら資金を集めていた

論点

今回の件を、暗号通貨やマルチ商法の際に問題となりやすいいくつかの法律的観点から考えてみます。

特定商取引法違反

消費者庁の関連サイトである特定商取引法ガイド のページを確認すると、いくつかの禁止事項や、解約に関するルールが存在していることが分かります。詳細が気になる方は直接特定商取引法ガイド のページをご確認いただくと良いかと思います。

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